いまだ不明な麻酔のメカニズム!日本発祥の歴史、医療事故の危険性は

2018年5月25日

医学の発展に絶対に欠かせない存在なのが「麻酔」。患者の痛みを取り去ることが可能になったことで、大規模な外科的治療を行えるようになりました。

麻酔薬が開発される以前は、処置の痛みでショック死する患者もいたといいます。

麻酔薬の扱いを専門とする「麻酔科医」という職業が確立されていることからも、その重要性がうかがえます。

しかし!この麻酔のメカニズム、実は完全には解明されていないんです。麻酔薬の使用が原因となった医療事故のニュースも耳にしますが、実は危険な一面もあるのでしょうか。

また、世界初の麻酔を生み出したのは日本人であることを知っていましたか?

私たちの健康を支える麻酔薬についてまとめました。

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麻酔には2種類

麻酔とは薬物などによって人為的に痛みや感覚をなくした状態にすること。麻酔状態を引き起こす薬物を「麻酔薬」と呼びます。

その効き方によって「局所麻酔」と「全身麻酔」の2つに大きく分けられます。

局所麻酔は抹消神経に作用し、体の一部分のみの感覚を失わせます。患者の意識はあります。

一方、全身麻酔は中枢神経に作用し、意識消失、痛みを感じない、体が動かない、呼吸ができない…などの状態をもたらします。今回は特に「全身麻酔」の仕組みについて調べました。

全身麻酔は人工呼吸器が必須

全身麻酔の特徴のひとつに「呼吸ができない」ということがあります。麻酔による事故の多くは人工呼吸器の不備が原因となっています。

施術中、患者は人工呼吸器を着けます。そして麻酔科医は麻酔科医は細心の注意を払って投与量を調整したり、状態を絶えずモニタリングします。

それほど注意深く行っても、麻酔が原因で死亡したり、後遺症が残ったりする例は数万件に1件の確率で発生しているのが現状です。

麻酔のメカニズムは未解明

その理由のひとつとして、「そもそもなぜ麻酔が効くのか」というメカニズムが完全に解明されていないことがあげられるそうです。

全身麻酔の投与方法は大きく2つあります。

  • 静脈麻酔…静脈に点滴で薬品を投与(例:プロポフォール)
  • 吸入麻酔…呼吸器からガスを投与(例:クロロホルム)

特に2番目の吸入麻酔については麻酔が効くメカニズムがはっきり解明されておらず、「今まで使ってきたから大丈夫かな~」という経験則で現在も使用されているそうです!

吸入麻酔は点滴が難しい患者、例えば子どもにも使われることがあるんだとか。はっきりと仕組みが分かっていないものに命を預けていると思うと恐ろしくなりますね。

しかし、そもそも人間の体の機能も完全には解明されていないんです。薬の効果についても不確かな部分があるのは仕方がないことかもしれません。

世界初の麻酔を開発した日本人

麻酔の歴史は200年以上前にさかのぼります。

記録に残る物として世界で初めて全身麻酔を用いた手術に成功したのは日本人医師・華岡青洲(はなおか・せいしゅう)だと言われています!

麻酔を生み出すまでには壮絶な苦難がありました。チョウセンアサガオやトリカブトなどの薬草を配合したものに麻酔効果があることを発見しましたが、人体実験をしなくてはなりません。

自ら人体実験を志願した母親は死亡、妻は失明する結果に。そんな悲しみを乗り越えて、ついに生み出したのが「通仙散(つうせんさん)」です。

使われたのは乳がんの摘出手術。それまでも16世紀頃から海外では乳がんの手術が行われていました。しかし麻酔がなかったため患者の痛みはすさまじく、病巣を大きく切除することができなかったためがんが転移することも多かったそうです。

経口摂取する通仙散を使った手術は見事に成功!麻酔薬発展の原点となったそうです。この偉大な発明をしたのが日本人だとは、誇らしい気持ちになりますね(^^)

体を守る大切な役割

麻酔が原因となる医療事故が起きると、ニュースなどでも大きく取り上げられるので不安になってしまいます。しかし、その確率は非常に低く、1万分の1とも10万分の1ともいわれています。

麻酔はただ意識を奪うための薬ではなく、激しい痛みから体を守り適切な処置を可能にするという大切な役割を持っているんです。

そして麻酔科医もただ薬を投与しているわけではなく、患者の全身管理が重大な職務となっています。医療者を信頼し、安心して治療に臨みましょう。

「外科の夜明け」という本はおすすめです!麻酔がなかった時代に、外科学がさまざまな困難を乗り越えて発展してきた様子が書かれています。特に帝王切開手術を受けた女性の悲惨な状況には衝撃を受けました…

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