血液型が違っても移植は可能!拒絶反応に関わるHLAって?
病気や事故などで臓器の機能が低下した人を救う最終手段となる「臓器移植」。
移植するためには臓器提供者(ドナー)と受容者(レシピエント)の間でさまざまな適合条件を満たしている必要があります。
でも実は血液型が違っていても移植はできるって知っていましたか?
「血液型が違うと輸血はできないのになぜ移植はできるんだろう」と不思議に思う方もいるのではないでしょうか。その理由を調べてみました。
血液型不適合と拒絶反応
ドナーとレシピエントの血液型が合わないことを「ABO血液型不適合」といいます。具体的には以下の通りです。
B型……A、AB型が不適合
O型……A、B、AB型が不適合
AB型……不適合なし
ABO血液型不適合のケースの移植は、実は一昔前までは禁忌とされてきました。
血液型とは血中にある抗原の型のこと。その型が違うと、免疫反応で異物とみなしてしまうため、移植した臓器も攻撃されてしまい機能しなくなってしまうのです。
これが「拒絶反応」です。
血液型以上に重要なHLA
臓器移植の場合、血液型以上に「HLA」の型が拒絶反応に関わってきます。
HLAとは「ヒト白血球抗原」のこと。いわば白血球の血液型のようなもので、人間の細胞と体液に分布しています。
このHLAの中で拒絶反応に最も関係するのは6項目と言われています。このパターンがすべて一致する確率は兄弟姉妹で4分の1、それ以外になると1000分の1ほどしかないそうです。
血液型に加えHLAの型が合っている必要があるとすると、兄弟姉妹ですべてが一致する人がいない場合、移植できる確率はかなり低くなってしまいます。
免疫抑制薬で拒絶反応を防ぐ
しかし近年の医学の発達によって、血液型やHLAが不適合の場合でも移植ができるようになってきたそうです。
「免疫抑制薬」は免疫の過剰な反応を抑えることができる薬です。
手術の事前準備として数種類の免疫抑制薬を飲み薬や点滴で投与しておくことで拒絶反応を起こさずに移植することができます。
ただし副作用があり、免疫機能を抑えることは細菌などへの抵抗力も弱くなるということなので、投与量は医師の指導の下、体の状態に合わせて調整する必要があります。また、免疫抑制薬は臓器が機能する限り、手術後も服用し続けなくてはなりません。
ドナーの意思表示は家族にも伝えよう
移植という選択肢が広がり、治すことのできなかった患者さんが希望を持てるようになりました。
しかし日本は欧米諸国に比べて、まだまだドナー不足です。
日本臓器移植ネットワークによると、日本国内で臓器提供を待っている患者さんは約14000人。それに対して、実際に移植を受けることができるのは約400人程度です。
適合するドナーを待っている間に亡くなってしまう患者さんも多くいるそうです。
保険証や免許証の裏は臓器提供の意思表示欄になっています。意思表示欄への記入は任意になりますが、意思があるときはぜひ記入しておきましょう。
私も「自身が亡くなった後、誰かの命を救う助けになれば」と思い、脳死時と心停止時の臓器提供の意思を記入しています。
さらに万が一の時にスムーズに進行するよう、夫にも要望を伝えています。
脳死状態下での移植をドナーが希望していても、家族が反対するケースが多いそうです。家族の中に一人でも反対者がいると、移植は実行できません。
せっかくのドナーの意思を生かすためにも、普段から家族と話し合う機会を設けることをおすすめします!
ディスカッション
コメント一覧
補足:ブログ主の夫より
日本の臓器不足は深刻です。人口比で言えば日本は米国の1/10程度くらいかと思います。本邦における脳死ドナー不足の要因として死生観や宗教観などが言われていますが、私が注目したいのは「関心」です。自分が脳死ドナーとなる可能性について無関心な人が多いのではないでしょうか。自分の運転免許証をみて、提供するもしないも意思表示をしていない人はこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。
テレビやSNSで「〇〇ちゃんを救おう」というフレーズ、たいていの人は見たことがあるのではないでしょうか。渡航移植(日本では臓器が出ないため、大金を募って海外で臓器移植を受けること)の募金キャンペーンです。心臓移植を受ける小児のケースがほとんどである印象です。臓器移植ネットワークによれば本邦の心臓移植待機患者は約700人で、年間の心臓移植数は50例程度です。絶望的数字です。ちなみに、これらの数字はだれでもWeb上で閲覧可能です。
あらかじめ宣言しますと、本記載は渡航移植を責めるものではありません。重度の心疾患を持ち、移植を待っている患児のことを思うと、胸が締め付けられる思いです。もし自分の子供が心臓移植を要する状態となったら迷わず渡航移植を目指すでしょう。これは医師としての倫理は捨てて、完全に親としての立場での考えです。では移植医療における医師としての「倫理」とは何でしょうか。
「イスタンブール宣言」なる宣言文があります。これもWeb上で誰でも閲覧可能です。移植ツーリズムを控えるよう世界に向けて求める宣言です。自国の患者のための臓器は自国内で得られる範囲としましょうということです。実際、ヨーロッパの国々は現在では渡航移植を受け入れていません。
渡航移植先として有名なのは米国でしょう。米国では日本に比べ、たくさんの臓器提供があります。しかし重要なのは米国内でさえも「臓器が余っているわけではない」ということです。日本から米国に移植に行ったら、順番を飛ばされて待機時間が伸びる米国の子供がいるのです(移植は重症度で順番が前後する)。’’重度の心疾患で移植を待っている我が子。とうとう1位まできて移植までもう少しというところに某国から大金背負ってやってきた患児に順番抜かされ、待期期間が伸びた。その間、容体が悪化して移植不能となり死亡。’’渡航移植はこのような可能性をはらんでいます。
今月末に、一人息子が腎不全(現在、透析中)の為、主人から腎臓の提供を受ける手術を受ける事になっています。私は、今回の件が起きる、ずっと前から、私自身が何か不慮の事故とかに遭い、脳死になった場合は、迷わず必要とする方達に使える臓器は譲って欲しいと、主人や、主治医に話して来ましたが、完治したとは言えC型肝炎も患いましたし、15歳からは膵炎も患っています。腎臓も度々の腎結石のせいか?週に2度ほど利尿剤を飲みつつ生活している状態なので、今回の息子への移植も敵いませんでした。私は日本人ですが、人は亡くなったら焼かれて骨壺に納まるだけだと割り切っていますので、他の臓器はともかく、心臓や角膜だけでも誰かの役に立てるなら、膵炎の発作に長年苦しみながら頑張って生きてきた甲斐があるというものです。それにしても日本人って心臓や腎臓に限らず、何故こうもドナー希望者が少ないのでしょうか?知人に価値観や物事の考え方が偽善的かつ傲慢だと指摘されました。100歩譲って偽善者だとしても、脳死で二度と生き返る事のない肉体に、まだ誰かの為に使える臓器があるなら私は、やはり強く臓器提供を希望したいと思っています。
JUNさん
コメントをいただきありがとうございます。息子さんが腎臓移植手術を受けられるのですね。ご自身の体調も優れない中、本当に心配でお辛いこととお察しします。
私ももっと脳死ドナーが増えてくれればと思っています。今の日本は家族や親族から臓器提供を受ける生体間移植のほうが多いですが、レシピエントの負担を考えると1人でも多く脳死移植ドナーが求められています。
日本では脳死になった場合でも、医師から「臓器提供しませんか」と提案することは通常ありません。あくまで自発的に「臓器提供したい」と書面で意思表示をしておかないと貴重な臓器が生かされないままになってしまいます。
欧米ではきちんと医療機関に移植コーディネーターという職業の方がいて臓器提供を提案したり、流れを説明して病院と患者の間に立ってくれるのでとてもスムーズだそうです。日本ではこのような役割の人がいないので、なかなか臓器提供までたどり着けません。
それに、日本人は「脳死は人の死」という考えへの拒否感がまだまだ強く。宗教観もあるのでしょうか?「臓器提供しませんか」と提案したら「不謹慎だ」と返されてしまいそうですよね。
少なくとも自分の家族や友人にはきちんと臓器提供の意思表示の大切さを伝えています。いま2歳の息子にも、話が分かる時が来たらきちんと説明しようと思っています。
息子さんと旦那様に負担が少なく手術が進むように願っております。そして寒さ厳しい折、JUNさんもご自愛ください。
なみさんの御主人の心移植についてのコメントに、後ろめたさを感じる思いで何から話していいか・・・考えがまとまりません。先週、孫娘が心筋緻密性障害という診断で現在ICUに入っています。昨年(2018年)10月に生まれた時に心臓に疾患があるといわれたそうで、先週の緊急入院で医師から下された診断は心臓移植しか方法がないそうでした。
心筋緻密性障害という病名と心移植について、自分ながらに僅かでも知識を得ようとネットで検索しました。莫大な心移植費用に驚きを隠せませんでした。
心移植を待っている多くの小児患者を知ったことで、我が子を先に移植という思いはエゴ以外の何物でもないと感じる反面、まだ生まれて5か月しかたっていない子供の人生を見捨てられないという思いもあります。同じ心移植を待っているレシピエントの御両親も同じ思いだという事も痛感しています。
日本の現状医療に於いて、心移植イコール募金という構図はある意味常態化しています。でもそうでもしないと生きられないという結果でもあることは現実です。平凡な若い夫婦の収入で出来る治療ではないことが募金に頼らざるを得ない日本のドナー登録の現状かな・・・と。
現在、孫娘は心臓にたまった水を少なくするため点滴で治療しています。多少回復しても心移植という結果は変わらないと思います。
今後は親族一丸となって孫娘を長生きさせていきたい思いです。
最後にもし倫理的に可能なら、私の老い先短い人生をこれからの未来を生きる孫娘のために生体心移植をしてもいいという決意を持っていることを書き加えておきます。
孫を溺愛するジイジさん
コメントをいただきありがとうございます。孫娘さんの状況、本当にお辛い気持ちだとお察しします。
海外渡航での移植(通称:移植ツーリズム)が倫理的に良くないことだと頭では理解しても、大切な家族を救いたいという気持ちは当然のことです。私も息子がおりますので、親として何としてでも息子の命を救いたいと思うに違いありません。
大切なのは、きちんと正しい知識を身に着けた上で「何を選択するか」だと思います。
今の日本の現状では、特に小児の心臓疾患は海外渡航での移植に頼るしかないのが現状です。心臓は脳死からの移植しかできませんし、大人の心臓は小児に適合しないことが多く、国内待機ではほぼ絶望的です。
国内で小児の脳死ドナーがもっと増えていくしか道がありません。道のりは遠いですが、私も微力ながらブログを通じてドナー登録と移植への認知を広めたいと取り組んでいます。
最近、改めて移植ツーリズムについて記事をまとめましたので、もしよければお読みください。
http://igakuhajime.com/transplant-tourism/
孫娘さんの体調が快方に向かうよう心から願っております!