採血で倒れるのは貧血じゃない!迷走神経反射の予防と効果的な対処
「採血の時に気が遠くなった」「学校の朝礼で足元がふらついた」
そんな経験をしたり、見たりしたことはありませんか?私も採血の時に気を失いかけて座り込んでしまったことが何度かあります。
実はこれらの症状は「迷走神経反射」と言われ、すべて自律神経に関わりがあると考えられています。
「私はいままで気を失ったことがないから大丈夫!」と思っている健康な人でも突然症状に襲われる可能性があるので注意が必要です。
また「貧血かな?」と思い込んで鉄分の補給など誤った対処をしていると、いつまでも症状が改善されない可能性も。
迷走神経反射のメカニズムや予防法、いざという時の対処法をまとめました。
【体験談】採血の時、急に目の前が真っ白に
私が初めて迷走神経反射を経験したのは25歳の時。健康診断で採血をしている時に急に気持ち悪くなってまっすぐ座っていられなくなりました。
そして目の前が真っ白になって、気付けば床に崩れ落ちていたのです。
それまで気を失うことなど一度もなかったため自分でも何が起こったか分かりませんでした。「貧血気味なのかな」と思いましたが、血液検査の結果も異常がなく原因は分かりませんでした。
しかしそれから数年後、また同じことが起こりました。今度は点滴を刺した時でした。
血を抜かれたわけでもないのに気が遠くなったので「貧血ではない!」と確信。医師から「迷走神経反射」という言葉を聞いたのはその時が初めてでした。
迷走神経反射はなぜ起こるか
まずは体の神経の働きについて説明します。神経は「体性神経」と「自律神経」の2種類に大きく分けられます。
自律神経と副交感神経
「体性神経」は体を動かしたり見る・聞くなどの意識的な感覚を司っています。「自律神経」は内臓の動きや心拍など体の内部を無意識に調整しています。
さらに自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の二つに分けられます。
副交感神経…眠っている時やリラックスしている時に優位
血圧、脈拍が低下し血流が不足
迷走神経は自律神経の中でも「副交感神経」にあたります。頭や首、胸、内臓などに通っていて、まるで迷走するかのごとく体の広い範囲に分布しているのでこの名前がつきました。
・血圧を下げる・脈拍を減少させる・胃腸を動かし消化する…などの働きがあります。
精神的ストレスなどの刺激が過度に加わると、迷走神経が過剰に働き血圧や脈拍が急低下。すると脳への血液量が保てなくなり意識を失うことがあります。これを迷走神経反射というのです。
横になった状態でも迷走神経反射は起きる!
迷走神経反射について調べていたところ「横になった状態では絶対に起こらない」という記述を多く見掛けました。
しかし外科医の夫に聞いてみたところ…
実際に患者さんで実例を見ているそうです。
じゃあ迷走神経反射が起きそうになった時、横になっても意味がないのかというと、そんなことはありません。「絶対に起こらない」わけではありませんが「起きづらくなる」のは確かみたいです。
そして一番のメリットが「倒れてけがをするリスクがない」ということ。倒れそうになったらできるだけ安全な場所に移動して横になり、けがをしないよう注意してくださいね。
失神の前兆に注意
実際に失神してしまいそうになった時は、気を失う数十秒~数分前に前兆が現れることが多くあります。めまい、冷や汗、吐き気、視界のぼやけを感じたらすぐに失神防止の対策を取りましょう。
私は初めから採血は寝た状態でしてもらうようお願いしています。看護師さんは慣れているので快く対応してくれますよ。
そして恐怖感をできるだけ和らげるよう針を見ないようにして、看護師さんと会話をしながら意識をそらせるようにしています。
倒れてしまったら…具体的な対策
原因となる行為をやめて横になり深呼吸をします。足を頭より高くすると脳への血流が回復しやすくなるのでなお良いです。
横になるのが難しい場合は座りましょう。両手の指を組んで強く握ったり、手足に力を入れるのも効果があります。
たいていの場合は安静にしていると数十秒から数分で意識が戻ります。
こんな刺激がきっかけに
- 強い痛み
- 排便、排尿
- 長時間立ちっぱなし
- 脱水
- 恐怖感
- ストレス
例えば「ショックなことを聞いて倒れた」「満員電車の中で気分が悪くなって倒れた」なども迷走神経反射と考えられています。
私の場合は「採血で針を刺されることへの恐怖」が引き金となったようです。採血時に倒れた経験がある人は意外と多いようで、検索してみるとたくさんの事例がヒットしました。
経験者が多い「排便ショック」
特に「トイレでいきんでたら気が遠くなった」というケースは「排便ショック」とも呼ばれ、比較的多くの人が経験しています。そのメカニズムがちょっと興味深いんです。
心臓や肺はろっ骨と横隔膜で囲まれた「胸腔(きょうくう)」と呼ばれる空間におさまっています。そして胸腔内は常に陰圧(大気より圧が低い)となっています。
一方で「トイレでいきむ」という行為は呼吸を止めて腹圧をかけます。
そうすると普段は低く保たれている胸腔内圧が瞬間的にぐっと上がることで、心臓が送り出す血液量が減って一気に低血圧になってしまいます。
これが迷走神経反射を引き起こすのです。
どんな人がなりやすい?
刺激が加わっても迷走神経反射が起きる人と起きない人がいます。この差はなんでしょうか?
一般的には「ストレスを感じやすい人」「血圧が低い人」「持病がある人」などの要因が関わるとされています。
しかし私自身はこんな状態でした。
- ストレスを感じないほう
- 血圧は正常
- 持病なし
誰でも突然になる可能性あり
さらにその時まで一度も失神したことはありませんでした。
私の経験を踏まえると、誰でも突然に意識を失う可能性があるのです!
その後、採血のたびに倒れるようになったかと言えばそんなことはなく、平気な時もありました。自分の体調や精神状態にも影響されるのではないかと考えられます。
誘発する行動や状態
- 脱水
- アルコール摂取
- 過度の運動
- 空腹
- 寝不足
- 長時間立っている
- 暑さを感じている
これらは迷走神経反射を誘発すると考えられる行動や状態です。倒れた経験がある方は、特に意識して避けるように気を付けましょう。
迷走神経反射は意識が早めに回復するとはいえ「倒れた拍子に頭を打ったら」「倒れこんだ場所が車道や駅のホームだったら」と考えると怖いですよね。
もしめまいや吐き気などを急に感じたら「もしかして迷走神経反射かも…」と考えて、予防策や処置法を実行しましょう!
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補足:ブログ主の夫より
迷走神経を意味する「貧血」は日常生活でしばしば使われます。迷走神経反射も真の貧血も症状としてふらつき、顔面蒼白、ひどいときには意識消失という似た症状を呈するため、このように呼ばれるんですね。つまり迷走神経反射を表現するのに「貧血」という用語を使用することは非医療者としては誤りとは言えません。「月経」を「生理」、「虫垂炎」を「盲腸」と呼ぶことと似た関係、つまり俗称です。
ただ、真の貧血とは異なると知っておくのは重要で、それが本記事のキモかと思います。
胸腔内圧が高まることで迷走神経が刺激され、失神を起こすというエピソードが紹介されていますが、これは利用することもできます。健康診断などで血圧を測るとき、緊張して高い値が出てしまう方がいると思います。そんな方は測定の直前に思いっきり息こらえをしてゆっくり息を吐くというのを2,3回やってみてはどうでしょう。少なくとも私については降圧効果があるようです。