紹介状の有無で受診料が変わる?「病院」「診療所」の違いを知ろう
「日本には医師が足りない」「数を増やして医師の過重労働を解消すべき」とテレビなどでよく議論されています。実際に大学の医学科が新設されたり、医師不足解消に向けた施策がさまざま行われています。
しかしその一方で、日本は世界一病院が多い国なんです。それも断トツで!
厚生労働省の統計によると、全国の病院は8399施設(2018年2月末現在)。ちなみに世界2位のアメリカは約5000施設です。
さらに「〇〇医院」「〇〇クリニック」などのいわゆる「診療所」はなんと10万施設以上もあります。
「医師が足りない」と社会問題になっているのに、街中には医療機関だらけ…というのが日本の矛盾した現状です。
これだけたくさんの医療機関があると迷ってしまいますが、同じ治療をしても施設によって自己負担金が変わることがあります。場合によっては初診の費用が5000円ほど高くなってしまう時も!
ポイントは「医療機関の分類」と「医療費以外の特別料金」についてしっかり知っておくことです。
ベッド数によって分類
私たちは普段、規模の大小に関わらず医療機関をまとめて「病院」と呼ぶことが多いと思います。本来、「医療法」では「病院」と「診療所」を分けて定義しています。
一番大きい違いは入院用ベッドの数です。
20床以上が病院
医師が診療を行う施設で、入院用ベッドが20床以上ある施設を病院と呼びます。その中でもさらに高度な医療を行う施設はベッド数や設備、医療内容によって以下のように細分化されています。
特定機能病院(厚生労働大臣が承認)…入院用ベッド400床以上、医師数が通常の病院の2倍程度、集中治療室や無菌病室がある、定められた16診療科があること など
地域医療支援病院(都道府県知事が承認)…入院用ベッド200床以上、地域かかりつけ医の機能を担う、地域医療従事者に教育を行っている、救急医療を提供できる など
特定機能病院は大学付属病院や各地のがんセンターなどの著名な大病院。地域医療支援病院は地方都市の総合病院というイメージです。
ちなみにこの「総合病院」という定義は医療法にはありません。1996年の医療法改正で廃止されました。以前は入院用ベッド100床以上、特定の5診療科を含む…などと定められていて、その名残で「総合病院」の名称を使っている病院が多くあります。
19床以下が診療所
入院用ベッド19床以下、もしくは入院施設がない医療機関を「診療所」と呼びます。「〇〇医院」「〇〇クリニック」「〇〇内科」などが診療所にあたります。
病院に比べると小規模な施設で、かかりつけ医として第一次医療を担っています。必要な時は紹介状を書いて大きな病院への橋渡しとなってくれます。
400床、500床の病院は特別料金も
一般的にはベッド数が多く、施設の規模が大きいほど医療費は高くなると言われています。特に患者の自己負担に影響するのが、「紹介状を持っていない患者」に対する特別料金です。
その特別料金が適用になるのが、先ほどご紹介した「400床以上の特定機能病院」と「地域医療支援病院の中で500床以上の病院」を受診するケースなのです。この2つはいわゆる「大病院」と呼ばれます。
これまでは特別料金を請求するかしないか、料金はいくらにするか、などは大病院の判断に任せられていました。
それが2016年4月から国の施策で特別料金が統一されたのです。救急の場合、やむを得ない場合は除き、原則として徴収することが義務となっています。
診療所などの紹介状なしで大病院の初診を受ける患者は5000円以上、他の医療機関を紹介されたのに再度大病院を受診した場合は2500円以上の自己負担が医療費にプラスされることになりました。
平成28年4月からは、緊急やむを得ない場合を除き、大病院(特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院)で、紹介状なしで初診を受ける場合は5,000円(歯科の場合は3,000円)以上、他の病院・診療所への紹介を受けたにもかかわらず再度同じ大病院を受診する場合は2,500円(歯科の場合は1,500円)以上の特別の料金を、診察料とは別に必ず支払うことになります。
出典:政府広報オンライン
2016年4月から対象となったのは全国262施設。さらに対象施設を拡大しようという動きもあります。
「大病院のほうが安心」といきなり初診を受けると思わぬ出費になるかもしれませんのでお気を付けください!
この施策が義務化されるまでは、大病院の初診の半数以上が紹介状を持たない患者だったそうです。そのことが「長い待ち時間」「短い診療時間」「医師の過重労働」などさまざまな問題を助長してきました。
私は持病があり、大学病院を頻繁に受診しています。が、昨年から待ち時間がグッと減ったように思います!以前は予約しても2、3時間待つことがありましたが、最近は1時間程度でお会計まで済んでしまうこともあり、とても助かっています。
診療科により差はあるでしょうが、この施策の効果が少しずつ出ているのかもしれませんね!
ボーダーラインは200床
この特別料金は200床以上の病院でも独自の判断で徴収することができるそうです。つまり200床未満の病院なら特別料金がかかることはありません。
ほとんどの病院では特別料金についてHPなどに記載があるので、事前にチェックしてから受診すると安心ですね。
セカンドオピニオンも活用
大病院と診療所がそれぞれの特性を生かして連携することで、質が高い医療をより多くの人が効率的に受けられるようになります。
まずは信頼できるかかりつけ医に相談して、必要な時は紹介状を書いてもらうようにすれば余計な自己負担金も減らすことができます。
紹介状は、患者側から自発的に「この病院で治療を受けたい」「診てもらいたい先生がいる」という要望を伝えることが可能です。
また、「紹介」とは少し違った「セカンドオピニオン」という仕組みがあります。治療拠点は変えないまま他の医療機関に相談して治療方針の選択肢を広げることができます。
このセカンドオピニオンはとても有益な仕組みなので、どんどん活用して自身が納得いく治療を受けていきたいですね。よろしければ以前の記事も合わせてお読みください!
それぞれの医療機関のメリットを知って、上手に使い分けましょう。
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