肝臓は切除しても復活する!驚異の回復力でも生体肝移植に問題多く

お酒好きの方がいたわらなくてはならない臓器と言えば…そう、肝臓です!

アルコールを分解する「解毒」の働きのほかに、栄養素を貯蔵して必要な時にエネルギーにしたり、消化と吸収を助ける胆汁を作ったり。

数百種類の酵素を使って原料に化学変化を起こす「工場」のような役割をしています。最先端技術をもってしても、肝臓と同じ働きをする工場はまだ作れないと言われているそうですよ!

その肝臓の臓器移植は日本国内でも数多く行われていますが、その8割以上は健康な近親者から一部をもらう「生体肝移植」です。

最近知って驚いたのは、臓器提供者(ドナー)の肝臓が術後にどうなるか。なんと自然に元の肝臓の大きさまで戻るそうです。しかも早い人の場合、たったの1カ月で!驚異の回復力!!

だからといって「臓器が元に戻るんなら生体肝移植でいいじゃないか」というわけにはいかず、ドナーの体への負担が大きいことが問題視されています。

今回は生体肝移植の現状と問題点について調べました。

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生体肝移植の現状

日本移植学会の統計によると、2016年の1年間の肝臓移植件数は438件。そのうち、脳死移植は57件、生体移植は381件です。日本国内では腎臓に続いて二番目に移植件数が多い臓器です。

どんな手術になるの?

健康な肝臓をドナーからもらう時、どの部分を切除してもいいわけではありません。「提供される側の肝臓の大きさ」によっておおよそ3つの区域に分けています。

左外側区域…肝臓全体の4分の1
左葉…全体の3分の1
右葉…全体の3分の2

移植される肝臓は大きすぎると移植後の臓器に血流が十分に行きわたらなかったり、お腹を閉じる時に圧迫されてしまったりします。逆に小さすぎると十分な働きができません。

提供される側(レシピエント)の元の肝臓は切除してしまうので、移植した臓器がうまく働かないということは死の危険性が高いのです。

どの区域の肝臓を移植するかの見極めが大切になります。

ちなみにドナーとレシピエントの血液型が違っても、免疫抑制薬などの発達で移植は可能なんです!よろしければ過去の記事も合わせてお読みください。

切除した肝臓が元に戻る?

肝臓の大きさは成人で1~1.5キログラムと臓器の中でも最大級です。そして冒頭でも紹介したように、その回復力は数ある臓器の中でもトップクラス。

例えば全体の3分の2を提供する右葉切除をした場合でも、早ければ1カ月ほどでほとんど元の大きさに戻るんだとか!

ただ、体積が増えても形は元のようには戻らず歪な形の肝臓となってしまいます。しかし機能はほぼ術前まで回復するそうです。

生体肝移植のメリット・デメリット

このように回復力が強い肝臓は「生体移植のハードルが低い」と言えます。

ほかの臓器で考えると、例えば腎臓の場合は一度切除してしまったら二度と回復しません。もしドナー自身の残った一つの腎臓が将来的に機能が衰えてしまったら…「ドナーになったせいで透析を余儀なくされる」という事態が起こってしまうかもしれません。

肝臓にはそういった意味でのリスクが少なく、日本では生体移植が多く行われています。生体肝移植のメリットとデメリットをまとめました。

メリット…事前に想定できる

日本の生体肝移植は世界的に見ても技術が高く、患者の予後が良いそうです。

生体ドナーから臓器をもらう場合は事前に検査を重ねて、移植する肝臓の大きさや形をシュミレーションすることが可能です。

提供を受けるレシピエントの体調が良い時を選んで手術の時期を選ぶこともできます。

デメリット…ドナーの負担が大きい

生体移植の場合、レシピエントにとってのメリットはありますが、ドナーへの負担が大きいことが問題になります。

肝臓を取り出す時はみぞおち付近に大きく「逆Tの字」のような切開をして大きく腹部を開きます。メルセデスベンツのマークに似ているので通称「ベンツ切開」などと呼ばれることもあるんだとか。

肝臓が回復する臓器だとはいえ身体にはかなり大きい負担がかかりますし、術後の合併症のリスクがあります。

残念なことに日本国内では過去に1例、ドナーの方が合併症で亡くなった例があるそうです。

予後が良くても、一生お酒を控えるなど生活面でもたくさんのことに気を付けなくてはなりません。本来は手術をする必要がない「健康な体にメスを入れる」のは倫理的な問題もはらんでいます。

やはり今後は日本国内でも、脳死移植ドナーがもっと増えることが必要になってきます。

生体ドナーの厳しい要件

「いざ肝臓の移植をしたい」と思っても、誰でも生体肝移植のドナーになれるわけではありません。

年齢65歳まで、体が健康である…などの身体の条件をクリアするのはもちろんですが、「原則6親等以内の血族、3親等以内の婚族」とされています。

親しい家族以外のドナーを認めると、「臓器売買の危険性につながる」ということでしょうか!少しぞっとしてしまいました…

意外と身近な肝炎ウイルス

肝臓移植にいたる原因で一番多いのが肝炎ウイルスです。

数十年前には予防接種で注射器を使いまわしたり、血液を原料とする血液製剤にC型肝炎ウイルスが混入していたり…という思わぬ感染ルートが大きな社会問題になりました。

現代では衛生管理を徹底して普段の生活では肝炎ウイルスに感染する機会はほとんどないように思われます。

しかし国内にB型肝炎の患者は100~130万人、C型肝炎患者は100万人いるといわれています。

毎年国内で100例以上の感染者を出しているE型肝炎は、豚やイノシシ、シカなどの生肉に寄生している時があります。食べる際、十分に加熱しなかったことで感染した例もあります。

肝炎ウイルスや肝移植も決して遠い世界の話ではなく身近な問題です。病を患っている人のために私たちが普段からできることの一つが脳死ドナーの意思表示をしておくこと。ぜひ考えてみてくださいね!

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