難病ALSと父⑤公費助成へ重要な「医師の意見書」。仲間と出会う大切さ
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う父が、意思伝達装置「マイトビー」を青森県で初めて公費助成されるまでをまとめた続きです。「難病ALSと父④」の記事から先にお読みください。
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申請方法が分からない…
公費助成を申請するにあたり「まずどのように申請したらいいのかが分からない」という状況でした。自治体に聞いてみても、「前例がないから」となかなか話が進みません。
そこで情報を得ようと相談したのが青森県ALS協会です。ここ数年で始動したばかりですが、患者同士の交流を図ろうと総会や勉強会を開いています。
自身も患者家族である協会の事務局長は医療機器代理店に勤めていることもあり、医療事情に詳しく、とても協力的。申請の段取りから必要書類の準備まで強い味方になってくれました。
手続きに詳しい方が近くにいなかったら、申請はますます困難なものになっていたと思います。
重要な「医師の意見書」
申請時には医師の意見書が必須になります。「就労や就学のために絶対にこのツールが必要」という理由を書いた書類です。
兄は時間をかけて意見書作りに取り組みました。テンプレートがあるわけではないので、どんな文言がベストか事務局長と相談しながら推敲を重ねました。
担当医も「マイトビー」について意見書を書くのが初めてということもあり、内容については何度か修正してもらう必要がありました。医師の忙しい業務の合間に意見書を作ってもらうので、なかなかこちらが思うようには進みません。
時には事務局長自身が医師とのやりとりの間に入ってくれることも。そして何回か修正を繰り返して数か月がかりで意見書が完成しました。
ぎりぎり間に合ったマイトビー
意見書などの必要書類を市町村に提出してからはただひたすらに待ちました。そして約半年後、県障害者相談センターの認可がおりました。
特例補装具として自己負担金は37200円でした。自己負担がいくらかかるかは所得に応じて違いがあるそうです。
詳しくは厚生労働省のHPに記載があります。
マイトビーの申請を検討し始めてから手元に届くまで、1年半もの時間がかかっていました。
時同じくして、それまで使っていた息を吹きかけることでブザーを鳴らす「ブレスコール」が口周りの筋肉が衰えたことで使えない状態になってしまいました。
マイトビーの認可がもっと遅れていたら…父は必要な時に介護者を呼ぶことができず、一層つらい状況になっていたはずです。
症状が進む前に先回りしてコミュニケーションツールを確保しておくことの大切さを実感しました。
家族の負担が軽減
マイトビーは当時の父にとってベストなツールだったと思います。視線のみで文章の入力ができるのでコミュニケーションがスムーズになったのは言うまでもありません。
プラスしてマイトビーの赤外線リモコン機能を使い、照明スイッチやテレビのチャンネル、エアコンスイッチが操作できるようになりました。
これまではいちいち家族を呼ばなくてはならなかったことが好きな時に1人でできるようになり、父にとっても家族にとっても負担軽減につがなりました。
代替品「OriHime eye」も注目
マイトビーは一式そろえると約150万円もかかる高価な機械。自治体によっては公費助成が難しいこともあると思います。機能が似たものでもう少し安価な代替機があるようなのでご紹介します。
「OriHime eye(オリヒメアイ)」という意思伝達装置は、普通のパソコンにソフトウェアをダウンロードして視線入力装置を取り付けることで、視線による文字入力ができるそうです。
価格は45万円と記載されています。前回の記事でもご紹介していますが、意思伝達装置は「補装具」と呼ばれ、必要な患者さんには公費助成してくれます。
この「補装具」の助成は上限45万円なので、公費助成の範囲内で「OriHime eye」を使うことが可能なのです。ちなみに高額なマイトビーは「特例補装具」という別枠で申請しました。
さらに「OriHime eye」は「OriHime」という分身ロボットをインターネット経由で接続することで、遠隔地から操作することができるんだとか。
家にいながらにして、会いたい人に会ったり、行きたい場所に行ったり、仕事もできたり…と可能性は無限大。本当に素晴らしい技術です!
この分身ロボットのことは、みかりん(@mikarinnomahou)さんのツイッターをたまたまお見かけして知りました。ご本人に許可をもらってツイッターへのリンクを貼らせていただきました!
ALSを患っているみかりんさんは、実際に分身ロボットを操作してカフェでお仕事をされたり、さまざまな場所への遠出を楽しんだりしているそうです。
体が動かなくたって、本人の気持ち次第でできることはたくさんあるのだと励まされます(^^)
どんどん動き、味方と出会うこと
今回の申請を通じて思ったのは、何か新しいことをしようと思う時はどんどん動くべきだということ。そして味方がいることがいかに心強いか、ということ。
インターネットを検索しているだけでは何も進まなかったことが、一歩踏み出してALS協会事務局へ電話をしたことで強い味方に出会い、望みを実現することができました。
以前、患者さんの家族に言われて心に残っているアドバイスがあります。
在宅介護体制が充実している仙台市の患者さん宅を拝見させてもらった時に、「なんでこんなに介護環境に地域差があるのでしょうか」という質問をしました。
すると患者さんの奥さんは教えてくれました。
これまで患者さんや家族が努力したおかげで、今も多くの患者さんが在宅介護を実現できていることを知りました。
患者さん同士が力を合わせれば、きっと何でもできる。自分らしく生きられる環境を実現していきたい!改めてそう思いました。
その後、青森県でも数件のマイトビー公費助成が実現しているそうです。我が家が前例となりほかの患者さんの助けになったのならうれしい限りです。
父が亡くなって役目を終えたマイトビーは、デモ機として寄付しました。今もほかのお宅で活躍してくれているといいなぁと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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