最強クラスの感染症「はしか」流行中。予防接種済でも感染する!
「今年は麻疹(はしか)が流行している」と連日のようにニュースで取り上げられています。
国立感染症研究所によると、すでに沖縄県や愛知県を中心に100人以上もの患者が確認されています。
東京都内でも感染者が確認され、ますます拡大する可能性があります。
「子どもの病気でしょ」「誰でもかかるもの」と考えている方もいるかもしれませんが、はしかは非常に感染力が強く、合併症も引き起こしやすい恐ろしい病気。
大人も感染しますし、大人になって初めて感染すると重症化しやすいと言われています。最悪の場合、死亡したり後遺症が残ることもあるんです。
特効薬はないので予防対策が重要ですが、ワクチン接種をしていても安心は禁物!一度ついた抗体が消えてしまうケースもあるって知っていましたか?
はしかの予防接種の有効性や、二次感染を防ぐために配慮すべきことなどをまとめました。
「最強クラス」と呼ばれる理由
はしかは人から人へ麻疹ウイルスが感染することにより起こる感染症。高熱やせき、鼻水など風邪のような症状が出た後、顔や体に発疹が現れます。
その最大の特徴は「最強クラス」と言われる強い感染力。1人の患者からあっという間に広がってしまいます。
そのほかにも恐ろしいポイントがいくつかあります。
空気感染する
飛沫感染だけではなくて空気感染もするので、マスクや手洗いをしても予防ができません。
例えば街中ですれ違ったり、感染者の直後にエレベーターに乗っただけでも感染する可能性があるんです。
感染後の発症率が高い
「不顕性感染」とは、細菌やウイルスに感染しても症状がでない状態です。はしかには不顕性感染がほとんどありません。
抗体がない感染者の発症率は95%とも言われています。
合併症になりやすい
はしかになると免疫力が下がるので、他の感染症にかかりやすくなってしまいます。これが合併症と呼ばれます。
合併症になる確率は患者の30%ほどといわれています。肺炎、脳炎などで死亡した例もあります。
特効薬がない
現在、はしかを治す薬はなく、対症療法をして自然に治るのを待つしかありません。
感染から日が浅い場合は麻疹ワクチンを接種することで症状を抑えたり、軽くしたりする効果が期待できますが確実ではありません。
そのため流行期には意識的に予防する必要があります。
「はしかかも?」と思ったら
感染者と同じ空間にいた可能性があって、さらに発熱や鼻水などの症状がある場合、「はしかに感染したかも」と不安になってしまうと思います。
医療機関を受診する際にも「自分から感染を広げない」ということを考える必要があります。
以下の点に配慮しましょう
- 医療機関に事前に電話して受診方法を相談する
- 電車・バスなど公共交通機関は使わない
- 人が集まる場所は避ける
- 予防接種を2回受けていない人や乳幼児との接触は避ける
効果的な予防法は?
前述した通り、はしかには特効薬はありません。
また、空気感染するため手洗い、うがい、マスクなど一般的な風邪の予防法では完全に防ぐことはできません。
事前にワクチン接種をしておくことが一番効果的な予防方法とされています。
20代後半~40歳の人は注意
はしかは2回の予防接種でほぼ完全に防ぐことができると言われています。現在、国が定める定期予防接種は2回無料で受けることができます。
しかしある年代の人は1回しかワクチン接種を受けていない可能性があります。それは20代後半~40歳くらいの人。
当時、予防接種で副反応が出たことから国の方針で摂取が控えられたのです。
予防接種しても抗体は弱る
そもそも予防接種を2回しているからといって安心はできません。
抗体は年齢を重ねるごとに弱っていきます。また、「抗体がつきにくい体質」の人もいます。
外科医の夫は業務にあたり、毎年抗体の検査をします。患者さんから感染してしまったら仕事になりませんし、院内感染の原因になってしまうからです。
検査をすると、なぜか毎年のようにはしかの抗体が消えてしまっているそうです。
抗体を投与しても、次の年の検査では消えているのでまた投与。(5/17:夫から誤りの指摘があり修正しました。詳しくはコメントをご覧ください)
抗体の元となる抗原を投与しても、次の年の検査では消えているのでまた投与。そんなことを繰り返しています。
大人がはしかにかかると重症化しやすいと言われています。抗体があるか調べたい場合は、費用と時間がかかりますが医療機関の内科などで抗体検査をすることができます。
海外からウイルスが持ち込まれる
はしかが流行するきっかけの一つが海外からの流入です。日本国内にはワクチンの普及もあり、それほど多くの麻疹ウイルスは存在しないそうです。
今年の流行も、海外からの旅行者らが国内に持ち込んだケースと考えられています。流行地域へ旅行する予定がある方は、予防接種を検討してみてくださいね。
定期接種は1歳の誕生日から
一昔前は「誰でも一度はかかるもの」と積極的にはしかを子どもに感染させようとする風潮があったそうです。
しかし現在では「命を奪いかねない病気」としてその危険性が指摘されています。
子どもへの麻疹ワクチンの定期接種は1歳の誕生日から可能です。大切な家族の健康を守るため、予防接種は早めに行いましょう。
ディスカッション
コメント一覧
訂正と補足:
本ブログの記事は私と妻の日常生活の会話からスタートしているものが多く含まれていますが、ちょっと訂正があります。
私の体内では麻疹の抗体が頻繁に低下していますが、そのたびに投与しているのは「抗体」ではなく、「抗原」です。この2つのキーワードから「免疫」について簡単におさらいしてみようと思います。
人間は一度罹った感染症には終生、罹患しないということを人類は経験的に知っていました。免疫とは「疫」を「免れる」状態であると理解されていました。その機序(メカニズム)はどんなものでしょうか。麻疹を例にとってみましょう。
麻疹に感染すると体内では麻疹ウィルスが大量に暴れている状態です。初動部隊としてウィルスと戦った細胞はウィルスを識別する物質を自身の表面に提示するようになります。この物質こそが「抗原」で、わかりやすく言うと「指名手配写真」です。
抗原が提示されると、それをもとにウィルスを攻撃するための「兵器」が構築されます。それが「抗体」です。抗体には5つのタイプがあり、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA、IgEと呼ばれます。今回はIgM、IgGの二つに注目します。まず最初に用意されるのがIgMです。即席で用意できますが、効果がそれほど強くありません。IgMでどうにか対処している間、白血球の一種である「ヘルパーT細胞」がこれまた白血球の一種である「B細胞」を刺激し、強力な殺傷力を持ったIgGをつくれるようにします。この抗体が変化していく過程を「クラススイッチ」と呼び、この過程で成熟したB細胞は「形質細胞」と呼ばれます。この過程には約1週間を要します。
外敵を効率的に叩けるようになるまで1週間かかると聞いて、「そんなにかかるの?」と感じる人は多いと思います。麻疹より身近なインフルエンザを例にとってみますと、1週間はすでに勝負が決している時期です。つまり、最初の感染においてIgGはほぼ役に立っていません。2回目以降、同じ外敵が侵入したとき、体内ではかつて1週間を要したすでにクラススイッチが終了しています。ウィルスや細菌が侵入すると即座にIgGが大量に産生され、自覚症状など出る前に排除されます。
ワクチンは弱毒化または無毒化したウィルスですが、投与して意図的にこの状態をつくりだすことができます。つまりワクチンは免疫学的には抗原を投与する行為ということになります。
実際に感染した時の記憶は体に強い記憶として残り、免疫状態は終生にわたって維持されます。ワクチンも基本的には一生、維持されますが、本物の感染に比べて刺激が弱いので、私のように抗体が自然消失している場合があります。この場合の抗体とは勿論IgGを指します。